director's voice

菅野あゆみさん/染織

Q1
和歌山県龍神村で染織を続けられる菅野あゆみさん。
久しぶりに「工房からの風」にやってきてくださいます。
今回はどのような出品をされますか?

A1
綿から糸を紡いで布を織っています。
素材は、主に、ペルーやインドの綿、そして、和歌山県内にて栽培された綿を使っています。

クリーム色のペルー綿、繊維の短いアジアの綿、綿によってそれぞれに特徴があり、織り上がった布の風合いも変わります。

小さな畑に種を蒔いてみたら、芽が出て、実がなり・・
弾けたワタの美しさに惹かれて始めた、私のものづくり。
糸紡ぎや機織りについては、本を読み、手を動かして学びました。

生活の中で使う布、綿の温もりを感じられる布を作っていきたいなと思っています。


ストール
手紡ぎの綿(ペルー・和歌山県)の凸凹した糸の質感が特徴です。
経糸の半分に、紡績糸(インド・デシ綿の空紡糸)を用いることで、軽くて乾きやすい布になっています。

和歌山県内で、天然灰汁発酵建てによる本藍染をされているニワカヤマ工場・澤口さんに、糸染めを依頼しています。
何度も染め重ねられて生まれる、さまざまな「青」の、艶やかで、深く、澄んだ色合いにより、布に奥行きがもたらされています。


スカーフ
50cm × 80cm くらいのコンパクトなサイズ。
対角をもって、くるっと羽織り、先を軽く結ぶ。
少し肌寒く感じた時、綿の布を一枚巻くだけでホッと安心できる気がします。
気の向くままに、ランダムな格子を織ってみました。


ハンカチ
ポケットにも入るくらいの小さな布。
手を拭いたり、敷いたり、掛けたり、包んだり、使い方はご自由に。

はじめは、ハリのある生地ですが、使って柔らかくなるにつれて、手に馴染み、吸水性もよくなります。

Q2
大切にしている工藝品(古いものでも、新しいものでも結構です)をひとつ教えてください。

A2
岩手県で、漆掻きをされている小村剛史さんのお匙。
自らの手で漆を採り、木地をつくり、仕上げられたお匙は、気取らず、丈夫で、やさしい。

数年前にいただいてから、ほぼ毎日、ずっと愛用しています。
(あまりに気に入って普段使いしているので、お見せするのが申し訳ない気がするのですが・・すみません。)

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かれこれ15年以上前、自転車で旅する青年が「一宿一飯で、なんでもお手伝いします」とやってきました。

『何かあるかなぁ‥』
急なことに戸惑いつつ、綿繰り(ワタの種取り)をお願いしたところ、一日黙々と作業をしてくれて、翌日、また自転車で旅立っていきました。

迷っているようで、意外に芯の強い青年が、その後、時を経て、大変な時もぐっと堪えて漆を続け、今、素晴らしいお仕事をされていることに、尊敬の念を抱いています。
私も、このお匙のように、だれかの心を灯すような布を作りたいと願っています。

じーんとくる、とてもよいお話ですね。

あゆみさんが初めてこの場に出てくださったのが2009年。
その後、2015年にも出展くださいました。
こうして染織のお仕事を長く続けてこられることに、どれほどの意思と実践があったことでしょう。
どこかの誰かの暮らしの中で、この漆の匙のようにあゆみさんの布が生き生きと役立っていると思います。
といいますか、私の手元でも、茜染めの布タオルと、藍染めのストールが、ふんわりくたっとよい風合いになっているのです。

菅野あゆみさんのブースは、ニッケ鎮守の杜に入って右側。
銀座アスターを背中にした4つ並んだテントの奥端です。

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